雷サージ対策の必要性 雷被害の増加について解説します

技術情報

雷サージ対策の必要性

近年、雷被害が増加

日本における雷発生回数は年100万回

日本で発生する雷は平均して年に100万回にのぼるといわれています。地球温暖化の影響によるゲリラ雷雨の増加に伴い、雷被害も増加しています。
また、世界的にも雷は増加しており、気候変動により米国本土全域の落雷の頻度が2100年までに50%増加するという報道もあります。(sience2014年11月14日発行Overall, the GCMs predict a ∼50% increase in the rate of lightning strikes in the CONUS over the 21st century)

年間被害額は推定2000億円

被害総額は年々増加

日本国内の年間雷被害総額は、1000億円から2000億円と推定されています(電気学会技術報告第902号:2002年、JLPA調べ)。2000億円という値は、落雷による工場の機械故障だけでなく、操業が停止したなどの2次災害を含んだものです。過去の被害では、一回の落雷で数千万円もの被害が生じるケースもあります。
下のグラフは全国自治協会の雷被害による共済金支払い金額の推移ですが、2009年を1とした場合、2013年には1.63倍の支払い金額になりました。これは共済金全体の50%を占める金額です。

気候リスク指数で日本ワースト1位

世界183カ国中でワースト1位 死者数や経済損失などを元に計算

「世界気候リスク・インデックス(2020年版)」によると、日本が18年7月の豪雨で甚大な被害を受けたことなどから世界183カ国でワースト1位となりました。台風や洪水などの気象災害の影響をランク付けした報告書「世界気候リスク・インデックス(2020年版)」は、ドイツの非政府組織(NGO)「ジャーマンウオッチ」により毎年発表しており、今回が15回目。気候リスク・インデックス(CRI)を集計しています。
気候リスク・インデックス(CRIスコア)は、気象災害による①死者数②人口10万人当たりの死者数③経済的損失④経済的損失の国内総生産(GDP)に占める割合――の各項目で国・地域別にランク付けし、その順位の数字に項目ごとに設定したウェートを掛けて算出した数値を足したもの。CRIが低いほど気象災害の影響が大きいことを意味します。

世界的に気象関連の経済損失は増加傾向

日本は雷など含め台風の脅威が増加

2010~2019年の気象関連の経済損失は世界全体で年平均1618億ドル(約17兆円)となり、その前の10年間から比べて6割増ました(再保険大手スイス・リー傘下の研究所調べ)。
日本だけでみると、近年は雷など含め、台風の脅威が増しています。

雷被害の99%は“雷サージ”が原因
しかも、そのほとんどの侵入ルートは不明

雷被害は直撃雷のイメージがありますが、その被害はわずか1%にとどまっています。雷被害の多くは「雷サージ(誘導雷・逆流雷など)」が原因です。雷サージ対策の必要性は近年高まっています。

雷サージはさまざまな機器に影響

自動火災報知機設備や電話設備、監視カメラなど、配線の長い機器に雷サージの影響が出ています。

侵入ルートが不明だからこそ、専門家による調査が必要です

雷サージはどこから侵入したのか不明な場合が多く、被害内容も一般故障と見分けがつかない場合がほとんどです。そのため、雷対策を実施するうえで、専門家による診断が欠かせません。機器の不具合が雷サージによるものかどうかは、雷による専門家によって現地調査を行い、雷サージが原因の場合は雷サージの侵入ルートを判断し、対策を講じることが重要です。

なぜ雷被害が急増?
原因は、機器の高集積化とネットワーク化

省エネルギー化、電気部品の高密度化が進み、小さな電圧で動く製品は雷サージの影響を受けやすくなっています。また、ICTの発達により、さまざまな機器がネットワークで繋がるため、雷サージの侵入経路も拡大しています。

上図はICチップの変遷です。1975年の基板は1線の幅が太く、配線と配線の間に距離があったため、絶縁が保たれていましたが、最近の基板は配線が細く、配線や部品が密集しています。絶縁距離が短くなった分、従来では影響のなかった雷サージに対しても配線間や部品間で放電しやすくなり、結果的に雷サージに対して脆弱になりました。ICチップだけでなく、基板全体が省エネルギー化、高密度化により、雷サージに対して弱くなっています。