用語の説明は主としてJIS Z 9290-1 及びJIS Z 9290-4に基づく。
落雷とは、雷と大地の間に発生する1回以上の雷撃からなる大気の電気的な放電現象。夏季に発生する夏季雷は、雷雲から放電が始まる(下向き雷)場合がほとんどであるが、冬季の日本海側で発生する冬季雷では、地上の高構造物から放電が始まり、放電路が上方に枝分かれする(上向き雷)ことが多い。
雷雲から大地への下向きリーダによって開始する雷放電。下向きの雷放電は、第1 雷撃とそれに引き続き発生することのある後続雷撃とからなる。一つ以上の雷撃に引き続き、長時間雷撃が起こることもある。夏季雷の90%以上は下向きの雷放電である。
接地した建築物などから雷雲に向かう上向きリーダによって開始する雷放電。上向きの雷放電は、第1長時間雷撃からなる。この長時間雷撃には、短時間雷撃が多重に重畳する場合としない場合とがある。一つ以上の雷撃に引き続き、長時間雷撃が起こることもある。
落雷の構成要素となる1回の電気的な放電現象。
雷雲から大地に向かって進展する放電。このリーダは大地に向かって一気に放電するのではなく、数十から数百メートル進んでは一旦停止しながら階段的に進行して大地に至る。この状態をステップトリーダ(Stepped leader)という。
先行放電が大地と結合すると、形成された高導電性電路を通じて大地から雷雲に向かって大電流が流れる。この電流を帰還雷撃といい、この時大きな雷鳴と閃光が発生する。
最初に形成された放電路に沿って2回以上の雷撃を繰り返す雷放電。1回目の雷放電を第1雷撃、2回目以降の雷放電を後続雷撃という。平均3回から4回の雷撃からなり、雷撃の代表的な間隔は50msである。雷撃の間隔が10ms ~ 250msの範囲で、数十回の雷撃の事例の報告がある。
大地または突出した物体に雷撃があった場所(突出した物体の例:建築物,引込線・引込管,樹木など)。雷放電は複数の雷撃点をもつ場合がある。
ある範囲への年間落雷数を示す場合に、落雷密度(回/km2/年)で表示する。年間雷雨日数(Td)と落雷密度(Ng)との間には相関関係はあまりないが、落雷密度を想定する関係式として、JIS C 60364-4-44(2011)では、Ng = 0.1Tdの関係式が提示されている。
ある地域への落雷回数の概略を把握する場合に使用される。下図は1954〜1963年の10年間の観測結果の平均を示している。
雷撃点に流れる電流。JIS Z 9290-1では雷保護レベルを4段階に分類し、最大電流(200kA、150kA、100kA、100kA)、最小電流(3kA、5kA、10kA、16kA)とし、電流波形を10/350μsと規定している。
雷撃点において雷電流が流れている時間。
雷放電の継続時間全域に対する雷電流の時間積分。JIS Z 9290-1では200kA(10/350μs)の電荷量を100クーロンとしている。
雷電磁インパルス(LEMP)によって発生する過渡的な過電圧及び/又は過電流。
落雷によって電源線や通信線に発生する過電圧で、電線と大地間(コモンモード)や線間(ノーマルモード)に発生する。
建築物の避雷針やアンテナ、送配電線、通信線などに雷撃が発生する現象。
直接の雷撃ではなく、近傍の樹木や建物に落雷によって、雷放電路に流れる電流による静電的・電磁的結合により、導体(送配電線、通信線など)に雷サージ(過電圧、過電流)が発生する現象。
構造物等への落雷による接地電位上昇によって、引き込まれている導体(送配電線、通信線など)に落雷電流の一部が流出する現象。
送電線などの鉄塔や架空地線へ落雷した場合に、接地抵抗や鉄塔のサージインピーダンスにより、鉄塔や架空地線の電位上昇が大きくなり、相導体へ逆に放電する現象。
被保護建築物などに引き込む電源線または通信線。
建築物など、その内部システム及び内容物、並びに人間に対する落雷の影響から保護する総合的なシステム。一般にLPS及びSPMで構成されている。
建築物などへの落雷による物的損傷及び生物への傷害を低減するために用いるシステム全体。外部雷保護システム及び内部雷保護システムの両方で構成されている。これは、総合的なシステムである雷保護(LP)の一部である。
雷サージ及び放射電磁界を発生する抵抗結合、誘導結合及び静電結合による、雷電流の全ての電磁気的な影響。
自然界で発生する雷において、想定する最大及び最小の設計値の範囲内の雷電流パラメータの発生確率に関係する数値。雷保護レベルは、雷保護対策を設計するために、関連する1組の雷電流パラメータの組み合せから選択して用いられる。
雷の電磁気的環境を定義した領域。LPZの領域の境界は、物理的境界(例壁,床,天井)を必要としない。
内部システムのLEMPの影響に対する保護のための対策手段。これは総合的なシステムである雷保護(LP)の一部である。
雷保護システム(LPS)の一部で、受雷部システム、引下げ導線システム及び接地極システムで構成するシステム。
雷保護システム(LPS)の一部で、雷等電位ボンディング及び/又は外部雷保護システムとの電気的絶縁で構成するシステム。
外部雷保護システムの一部で、落雷を捕捉するための、突針、メッシュ導体又は水平導体のような金属部材で構成するシステム。
外部雷保護システムの一部で、落雷電流を受雷部システムから接地極システムへ導くことを目的としたシステム。
外部雷保護システムの一部で、雷電流を大地に放流することを目的としたシステム。
分離した金属製部品の雷保護システムへボンディング(張り合わせ)すること。雷電流によって発生する電位差を低減するため、直接電気的に接続、またはSPDを介して接続すること。
閉鎖形、金属製、格子状または連続したスクリーンで、被保護建築物などの全体またはその一部を囲い、電気システム及び電子システムの故障を低減するために使用するもの。
0 〜 0.5 秒間程度までの停電のことをいい、一般的には瞬時電圧低下も含める。
送電線などに落雷があった場合に、事故の検出から落雷区間の系統を切り離すまでの間に発生する電圧低下のことをいい、ほとんどが0.2秒以内である。