SPD(避雷器)とは、雷によって起こる、電気・電子機器の故障を防ぐものです。
工場やビル、電柱など様々なところに設置されており、普段は見えない所で社会を守っています。
雷の電流は非常に大きく、落雷の影響により、その周辺には「雷サージ」と呼ばれる短時間で一時的に発生する異常な過電圧、過電流が発生します。
発生した雷サージは電源線や通信線を通って建物内の電気機器に侵入し、機器に被害を及ぼします。
この雷サージによる影響は落雷した地点から、数km先にまで及ぶことがあり、すぐ近くの落雷でなくても被害をもたらす可能性があります。
避雷針があれば雷から機器が守れる、というのは間違いです。
避雷針の役割は、雷による建築物の破損などを防ぐことであり、工場内の機械や、オフィスの電話、など建物内の電子機器は守ることができません。
これらの建物内の電気・電子機器を雷サージから守るためにはSPD(避雷器)が必要です。
分電盤用SPD
信号回線用SPD
雷の被害総額は年間1000億~2000億※といわれています。
近年の電気・電子機器はマイコン化や高集積化、ICT化が進み、常に雷害リスクにさらされています。
電源ケーブルの焼損(写真1)や、一見、故障と判別しづらい集積回路の破損(写真2)など、被害は多岐に及びます。
写真1
写真2
電気学会「電気学会技術報告第902号」(2002)
SPDは、雷サージなどの過渡的な過電圧を制限しサージ電流を分流させる目的で、1個以上の非線形素子※を内蔵しています。
その非線形素子の効果により、SPDは機器に加わる電圧を制限し、雷サージから機器を保護することができます。SPDは通常の使用状態の電源電圧に対しては高抵抗であり、電気を通さない絶縁物と同等です。
しかし、雷サージなどの過電圧に対しては、SPDは瞬時に高抵抗から低抵抗となり、サージ電流を接地側に流すと共に雷サージの電圧を抑制します。
SPDは雷サージを処理した後、すぐに高抵抗に戻るため、電源電圧による電流(続流)が流れません。
SPD:低圧サージ防護デバイス(Surge Protective Device)
別名:避雷器、アレスタ、サージプロテクタなど
非線形素子とは、MOV(金属酸化物バリスタ)、GDT(ガス入り放電管)、ABD(アバランシブレークダウンダイオード)、TSS(サージ防護サイリスタ)など。
機器の使用電圧(右図の場合はAC100V)よりやや高い位置にSPDの動作開始電圧(V1mA)があり、SPDは動作開始電圧を越えたサージ部分を大地に流します。このとき、電流の大きさに応じて残留電圧(雷サージを処理したときの電圧、制限電圧)が発生します。
SPDの最大放電電流(SPDに流れる電流の波高値、JISでは、クラスⅠではIimp、クラスⅡではImaxと呼ぶ)と、SPDが通常に処理した時の残留電圧に基づく電圧防護レベルがSPD選定のポイントになります。